漠然とした話だが、世の中の「分母」を考えた時、「ふつう」というカテゴリーが最も多くを占める。
何が普通で、
何がそうじゃ無いのかを考え始めると、
突っ込みどころが満載なので、
ここはまず、
普通に対して特別という二つの表現で括ってみたい。
世の中には、
特別なモノを好む人も多い。
例えばタイヤを例に挙げると、
用途に応じて特別なタイヤもあれば、
一般的にどこでも売っている普通のタイヤもある。
本来なら、
クルマの性能がタイヤによって著しく左右されることは好ましくない。
特別なタイヤを履かねばならぬようなクルマでは、
基本的にダメだと言うことだ。
普通のタイヤでも、
素晴らしい走りを見せないようでは、
大したクルマじゃない。
タイヤも同じだ。
「普通のタイヤ」こそ、
どんなシチュエーションでも、
クルマの性能を適切に路面へ伝えねばならない。
ブリヂストンは世界最大のタイヤメーカーだ。
最もシェアが大きいと、
普通である事の重要性が特に問われる。
「普通」の分母が大きいから、
保守的なタイヤになりがちだ。
保守的なことが一律に悪い訳ではないが、
面白くなかったりする。
強いて言うと「気持ち悪い」タイヤになる時もある。
不味いモノを食べようとは思わないじゃないか。
するとどうしても少し脚が遠のく。
ポテンザで痺れさせてくれた時代は過去のものとなった。
エコピアPZ-Xというタイヤ以降、
BSのリリースするタイヤに全く興味が無くなった。
2月になり、
ブリジストン販売から招待状が届いた。
新しいタイヤを見て欲しいと言う。
プレイズを復活させたという。
評判の良かったプレイズがPZ-Xとなって、
エコピアと融合したはずだが、
BSもそれが失敗だったと気がついたようだ。
比較試乗をミニバンでやるところがミソだ。
このプレイズに乗る前に、
まずEX20に乗って欲しいと促された。
この前身に当たるEX10はとても良いタイヤだった。
軽い1、5リットルのFWDに着けると、
エコタイヤを履いたとは思えぬ様な、
気持ち良い走りが可能になった。
その血統は生きていて、
このタイヤを着けた試乗車はキビキビ走った。
正直「トヨタ ノアってこんなに良いクルマだったのか!」と思った。
それくらい、
ノアは気持ち良く走った。
念のためにタイヤの製造年月日を記録した。
昨年の10月頃に製造されたタイヤだ。
雪がちらつき、
路面温度は7℃以下だ。
でも特にグリップには問題がなかった。
ドライだったのが幸いした。
タイヤの表情を見ただけで、
性能はなかなか解らないものだが、
このトレッドパターンは悪くない。
むしろ気に入った。
実際に走らせても、
思うように走れる良いタイやだった。
感心するほどジャキッとしている。
クルマの動きが掌に収まる。
ハンドリングも悪くないし、
コーナリングパワーもまずまずだ。
ジャキっとした印象を持つのは、
ステアリングインフォメーションが、
はっきりしているからだ。
直進性もよいし、
操舵した瞬間の初期応答性も悪くない。
次にダンロップのエナセーブに乗るよう促された。
走り始めはそれほど変わらない印象だ。
但しクルマの個体差が若干ある。クルマの仕様が少し違う。明らかにクルマがヤレていたのでトリップメーターからオドメーターに切り換えた。
ブリヂストン装着車両より走行距離が1.8倍ほど多かった。
但しタイヤそのものはイコールコンディションだ。 昨年の6月頃に製造されたタイヤなので、
鮮度上も問題ない。
走り出した時の印象はEX20と大差ないが、
タイヤの応答性は少し劣る。
しかし乗り心地やタイヤのノイズは、
僅かながら優れているように感じた。
速度を上げてカーブを曲がると、
差が現れた。
下り坂で勢いが付いた車体を、
丁寧にブレーキで抑えながら旋回しても、
BSに比べコーナリングパワーで少し劣る。
次に圧倒的な差が現れた。
登りの中速コーナーを、
アクセルイーブンで曲がろうとした時だ。
EX0とほぼ同じ速度で進入したが、
ステアリングの切り込みに対して、
思うように曲がり始めない。
「ヒヤリ」とした。
フロントに荷重を移すと、
旋回を始めたが、
とても気持ちの悪い旋回性能だ。
普通の人が普通に使っても、
背の高いミニバンだと、
遠心力で外側のタイヤに多くの荷重が掛かる。
その力が掛かった時に、
旋回しようとする方向にタイヤの力が向いていかない。
グリップが足りないと言うより、
旋回方向外側のタイヤに、
荷重が大きくかかると、
トレッドが均一に路面と接しない気がした。
スキール音を出す訳ではなく、
滑っている感じも無いのだが、
掌に乗っていない厭な感じだった。
まあ、
価格で選ぶタイヤだろう。
ダンロップに乗り終えて少し待つと、
プレイズを装着したノアが戻ってきた。
乗り込む前にタイヤを観察した。
昨年の9月頃に製造されたタイヤだ。
センターリブがEX20より一本多い。
運転席に座りドラポジを合わせた。
ゆっくりステアリングを切りながら走り始める。
狙いがすぐ解った。
これは実にシットリしたタイヤだ。
ステアリングの切り込みにも素直に反応し、
他のタイヤに比べ、
走行時に目立つ音を出さない。
乗り心地も悪くないし、
ステアリングにはオブラートに包まれたような手応えが届く。
普通の人が普通に使った時に、
とても好ましく感じるタイヤだと思う。
ミニバンの走りを確実に支え、
走向安定性も確かだ。
乗り終わり改めてタイヤを見た。
その時に、
もし3つをヘビーウエットな路面で比較したら、
どのような差になるのか試したくなった。
ウエット路面で試さないと、
タイヤの評価は片手落ちになる。
それはなぜか。
ダンロップとブリヂストンで、
タイヤの形状が異なる。
新型のタイヤでも、
ブリヂストンの形状は、
以前から存在するモデルに比べ、
さほど変わらない。
上の画像で見比べれば、
目の良い人なら解るはずだ。
もしかすると、
ウエット路面ではBSとDLの性能が、
拮抗する可能性がある。
EX20で、
もしエナセーブがひやりとさせた場所を、
変わらぬ印象で走れたなら文句はない。
いずれにしても、
普通の人が重いミニバンを、
当たり前に乗る時代になった。
子育て世代の女性が、
身の丈に合わないミニバンを振りまわす、
そんな姿を良く見る。
分母の大きな市場を対象に、
世界最大のメーカーが、
ハッキリとした違いを体感させる商品を開発した。
それが最新のプレイズだろう。
偏摩耗を徹底的に避けるように、
様々な知恵も凝らされている。
編摩耗する理由には色々あるので、
タイヤ側だけで解決するには無理がある気がするけれど、
「編摩耗しない」と言い切れるタイヤの方が売りやすいのだろう。
プレイズの印象は決して悪くはない。
でも乗り終えた後で、
「もう一度EX20に乗らせて」とお願いした。
やっぱりそうなんだよな。
ドライ路面でもう一度EX20を試したら、
こちらの方が好ましかった。
特に重心が高く、
マスもでかいミニバンには、
ショルダー部のブロックは大きい方が良いみたい。
この日の商品研修で、
テクニカルレビュを聞く機会は一切なかった。
そう言う事に興味のある参加者も居ないから、
やっても居眠るするだけと、
気を遣っているのかも知れない。
好きな時に来て、
乗りたいだけ乗ったら帰る。
その方が参加しやすい。
田舎にはちょうど良い塩梅の商品研修だった。
プレイズを詳しく説明したからといって、
それを聞いた販売担当者が情熱に燃えるとは思えない。
だから小難しい事をしても、
それが販売促進に大きく役立つ訳でもないだろう。
むしろ理屈を聞きたがる顧客層に、
このタイヤは売れないだろう。
黒くて丸くて、
安心して乗ることが出来て、
バリューならそれでもう十分だ。
これがブリヂストンブランドの長所でもあり、
大きな弱点でもある。
ブリヂストンタイヤジャパン、
中部カンパニーの皆さん、
よい機会を与えて戴き有り難うございました。
何が普通で、
何がそうじゃ無いのかを考え始めると、
突っ込みどころが満載なので、
ここはまず、
普通に対して特別という二つの表現で括ってみたい。
世の中には、
特別なモノを好む人も多い。
例えばタイヤを例に挙げると、
用途に応じて特別なタイヤもあれば、
一般的にどこでも売っている普通のタイヤもある。
本来なら、
クルマの性能がタイヤによって著しく左右されることは好ましくない。
特別なタイヤを履かねばならぬようなクルマでは、
基本的にダメだと言うことだ。
普通のタイヤでも、
素晴らしい走りを見せないようでは、
大したクルマじゃない。
タイヤも同じだ。
「普通のタイヤ」こそ、
どんなシチュエーションでも、
クルマの性能を適切に路面へ伝えねばならない。
ブリヂストンは世界最大のタイヤメーカーだ。
最もシェアが大きいと、
普通である事の重要性が特に問われる。
「普通」の分母が大きいから、
保守的なタイヤになりがちだ。
保守的なことが一律に悪い訳ではないが、
面白くなかったりする。
強いて言うと「気持ち悪い」タイヤになる時もある。
不味いモノを食べようとは思わないじゃないか。
するとどうしても少し脚が遠のく。
ポテンザで痺れさせてくれた時代は過去のものとなった。
エコピアPZ-Xというタイヤ以降、
BSのリリースするタイヤに全く興味が無くなった。
ブリジストン販売から招待状が届いた。
新しいタイヤを見て欲しいと言う。
プレイズを復活させたという。
評判の良かったプレイズがPZ-Xとなって、
エコピアと融合したはずだが、
BSもそれが失敗だったと気がついたようだ。
比較試乗をミニバンでやるところがミソだ。
このプレイズに乗る前に、
まずEX20に乗って欲しいと促された。
軽い1、5リットルのFWDに着けると、
エコタイヤを履いたとは思えぬ様な、
気持ち良い走りが可能になった。
正直「トヨタ ノアってこんなに良いクルマだったのか!」と思った。
それくらい、
ノアは気持ち良く走った。
念のためにタイヤの製造年月日を記録した。
昨年の10月頃に製造されたタイヤだ。
雪がちらつき、
路面温度は7℃以下だ。
でも特にグリップには問題がなかった。
ドライだったのが幸いした。
性能はなかなか解らないものだが、
このトレッドパターンは悪くない。
むしろ気に入った。
実際に走らせても、
思うように走れる良いタイやだった。
感心するほどジャキッとしている。
クルマの動きが掌に収まる。
ハンドリングも悪くないし、
コーナリングパワーもまずまずだ。
ジャキっとした印象を持つのは、
ステアリングインフォメーションが、
はっきりしているからだ。
直進性もよいし、
操舵した瞬間の初期応答性も悪くない。
次にダンロップのエナセーブに乗るよう促された。
但しクルマの個体差が若干ある。クルマの仕様が少し違う。明らかにクルマがヤレていたのでトリップメーターからオドメーターに切り換えた。
ブリヂストン装着車両より走行距離が1.8倍ほど多かった。
但しタイヤそのものはイコールコンディションだ。
鮮度上も問題ない。
タイヤの応答性は少し劣る。
しかし乗り心地やタイヤのノイズは、
僅かながら優れているように感じた。
速度を上げてカーブを曲がると、
差が現れた。
下り坂で勢いが付いた車体を、
丁寧にブレーキで抑えながら旋回しても、
BSに比べコーナリングパワーで少し劣る。
次に圧倒的な差が現れた。
登りの中速コーナーを、
アクセルイーブンで曲がろうとした時だ。
EX0とほぼ同じ速度で進入したが、
ステアリングの切り込みに対して、
思うように曲がり始めない。
「ヒヤリ」とした。
フロントに荷重を移すと、
旋回を始めたが、
とても気持ちの悪い旋回性能だ。
普通の人が普通に使っても、
背の高いミニバンだと、
遠心力で外側のタイヤに多くの荷重が掛かる。
その力が掛かった時に、
旋回しようとする方向にタイヤの力が向いていかない。
グリップが足りないと言うより、
旋回方向外側のタイヤに、
荷重が大きくかかると、
トレッドが均一に路面と接しない気がした。
スキール音を出す訳ではなく、
滑っている感じも無いのだが、
掌に乗っていない厭な感じだった。
まあ、
価格で選ぶタイヤだろう。
ダンロップに乗り終えて少し待つと、
プレイズを装着したノアが戻ってきた。
ゆっくりステアリングを切りながら走り始める。
狙いがすぐ解った。
これは実にシットリしたタイヤだ。
ステアリングの切り込みにも素直に反応し、
他のタイヤに比べ、
走行時に目立つ音を出さない。
乗り心地も悪くないし、
ステアリングにはオブラートに包まれたような手応えが届く。
普通の人が普通に使った時に、
とても好ましく感じるタイヤだと思う。
ミニバンの走りを確実に支え、
走向安定性も確かだ。
乗り終わり改めてタイヤを見た。
その時に、
もし3つをヘビーウエットな路面で比較したら、
どのような差になるのか試したくなった。
ウエット路面で試さないと、
タイヤの評価は片手落ちになる。
それはなぜか。
ダンロップとブリヂストンで、
タイヤの形状が異なる。
新型のタイヤでも、
ブリヂストンの形状は、
以前から存在するモデルに比べ、
さほど変わらない。
上の画像で見比べれば、
目の良い人なら解るはずだ。
もしかすると、
ウエット路面ではBSとDLの性能が、
拮抗する可能性がある。
EX20で、
もしエナセーブがひやりとさせた場所を、
変わらぬ印象で走れたなら文句はない。
いずれにしても、
普通の人が重いミニバンを、
当たり前に乗る時代になった。
子育て世代の女性が、
身の丈に合わないミニバンを振りまわす、
そんな姿を良く見る。
分母の大きな市場を対象に、
世界最大のメーカーが、
ハッキリとした違いを体感させる商品を開発した。
それが最新のプレイズだろう。
偏摩耗を徹底的に避けるように、
様々な知恵も凝らされている。
タイヤ側だけで解決するには無理がある気がするけれど、
「編摩耗しない」と言い切れるタイヤの方が売りやすいのだろう。
プレイズの印象は決して悪くはない。
でも乗り終えた後で、
「もう一度EX20に乗らせて」とお願いした。
やっぱりそうなんだよな。
こちらの方が好ましかった。
特に重心が高く、
マスもでかいミニバンには、
ショルダー部のブロックは大きい方が良いみたい。
この日の商品研修で、
テクニカルレビュを聞く機会は一切なかった。
そう言う事に興味のある参加者も居ないから、
やっても居眠るするだけと、
気を遣っているのかも知れない。
好きな時に来て、
乗りたいだけ乗ったら帰る。
その方が参加しやすい。
田舎にはちょうど良い塩梅の商品研修だった。
プレイズを詳しく説明したからといって、
それを聞いた販売担当者が情熱に燃えるとは思えない。
だから小難しい事をしても、
それが販売促進に大きく役立つ訳でもないだろう。
むしろ理屈を聞きたがる顧客層に、
このタイヤは売れないだろう。
黒くて丸くて、
安心して乗ることが出来て、
バリューならそれでもう十分だ。
これがブリヂストンブランドの長所でもあり、
大きな弱点でもある。
ブリヂストンタイヤジャパン、
中部カンパニーの皆さん、
よい機会を与えて戴き有り難うございました。