今ではかなり自然に紛れたが、
ある日突然樹木が切り倒され、
山肌がむき出しになった。
結局修復されることなく、
その開発は失敗に終わりモトクロスバイクの練習場になった。
並んでいるのは二代目REXだ。
REXと言うクルマは、
最後まで時代の荒波にもまれるクルマで、
大成することなく生涯を閉じた。
初代は着せ替え人形で、
視界が悪く強烈に乗り難かった。
SUBARUは最近盛んに0次安全と言うが、
全く考え無いクルマも作っていたので、
あまり大きなことは言えない。
ボディ拡幅と二度にわたる排気量変更を経て、
アルトの対抗馬としてファミリーREXを投入したが、
お世辞にも良いクルマとは言えなかった。
そして最初のフルモデルチェンジを昭和56年に迎えた。
FFレックスとしてRR方式から革新的に生まれ変わった時、
かなりのヒット作になった。
でも他社を寄せ付けない魅力を持っていた割に、
ライバル達も強靭だったので、
物凄く有利に販売戦略を構築できたわけでは無かった。
そのクルマをベースにジャスティを作り、
3気筒エンジンを搭載したので、
こちらのクルマもどっちつかずで魅力に乏しかった。
提携先の日産自動車と、
棲み分ける覚書を交わしていたので、
水平対向6気筒エンジンの開発計画は叩き潰されたが、
リッターカーの開発は順調に進んだ。
スバリスト達はリッターカーに飢えていたので、
そこそこスタイリッシュに仕上がったジャスティも好調に売れた。
こうして初代から二代目に引き継がれたレックスは、
満を持してフルモデルチェンジを迎えた。
この頃のSUBARUは、
深刻な危機を迎えていた。
ある意味で現状のSUBARUと良く似ている。
社運をかけて投入するはずのレオーネが、
型式指定のために作った生産試作車を重量操作し、
発表も発売もできない窮地に追い込まれた。
世界初のCVT搭載でデビューするはずのジャスティは、
ダイムラーの反発を買って量産につまずいた。
アルシオーネが華々しくデビューしたが、
ブランドの位置づけが追い付かず全く売れなかった。
歯車が狂うと元に戻るのに相当な時間がかかる。
その坩堝からデビューした三代目REXは、
やはり発売直後から大不振に陥った。
理由は動力性能とスタイルだった。
エンジン開発が全く追い付かず、
軽では当時取り残された2気筒のまま悶えていた。
同じ2気筒なら二代目のエンジンがまだましだと思えるほど、
デビューした時の内容はお粗末だった。
その上CMが酷かった。
量販グレードのVikiを使い、
ジェットコースターにゴリラのぬいぐるみを乗せて、
「キャーキャー」騒がせる演出は、
まさにSUBARUのはまったスパイラルを象徴していた。
オマケに直前に販売したREX コンビ NaNaの売れ行きが良すぎた。
CMキャラクターが岡安久美子で、
クールな印象が良かったのと、
エアコンが付いて60.5万円と言う破格値がウケた。
そんな訳で三代目REXの導入は大失敗に終わった。
その時の様子は五代目レガシィの導入失敗に次ぐ、
SUBARUの歴史上の汚点だろう。
すぐ対策が始まり、
NaNaの成功を踏まえた特装車が誕生した。
ベッキーじゃないぞ。
ヴィッキーだ。
当時からSUBARUの特装車チームは、
何とも計り知れない実力の持ち主だった。
リメイクやリデザイン、
突拍子もないネーミングかと思えば、
緻密な戦略とSUBARUの危機を何度も救った。
軍用メーカーの底力だろう。
だからいつも危機が訪れる度に強くなる。
そして勢いづく。
後の軽自動車撤退に繋がる誤算を演じた。
それが軽自動車エンジンの4気筒化だ。
550ccの排気量でマルチシリンダー化され、
圧倒的にトルク不足(涙)。
松田聖子が自らCMキャラクターに名乗り出るほどだと、
SUBARU自身は語ったが、
直後に排気量が660ccにスケールアップされるなど、
まるで先見性の無い開発で大損を出した。
めげずにオープントップを発売したが、
大量の売れ残りを出した。
買い取って愛車にしていた。
多摩ナンバーを中津川で揚々と乗り回し、
愉しい思い出が沢山できた。
良く走り愉快だが、
屋根を開口して車体強度が低いので、
あちこち補剛した結果、
ダンパーの動きがぎこちなくなった最悪のクルマだった。
そんな失敗作が三代目REXだったけれど、
ゴリラのぬいぐるみは愛嬌があって好きだった。
娘と息子の遊び相手だったVikiを、
スバル1300Gの後部座席に座らせたまま、
タイムカプセルのように時が流れた。
着ていた洋服を洗濯して着せようとしたら、
娘が心配そうに体を点検し始めた。
瀕死の状態だったらしい。
まるで手術を施すかのように、
毎日コツコツ時間のある時に修繕した。
腕が取れそうだと娘が言った。
解ったと言って手入れを続けた。
そんな時に痛風の薬が切れそうになった。
最近また左足が疼くと相談した。
すると、
尿酸値は抑え込んでるはずですから大丈夫!と頼もしい。
真っ赤な血液がギューッと抜き取られるのを見て、
何となく嫌な予感がした。
その前日、
左手の親指の根元を怪我して、
なかなか血が止まらなかったのだ。
その翌日の事だ。
朝早く出勤すると、
自分の他にはだれもいなかったはずなのに、
椅子の横に血痕があった。
自分ではない。
絆創膏を貼って血は出ていなかった。
綺麗に拭いたが、
何度拭いても血痕が浮き出る。
「お父さん、絶対何かに憑りつかれてるよ、ひひひ・・・嬉しい」
憎まれ口を叩きやがる。
ひょっとしたら、
可哀そうに・・・・。
放置されたVikiが、
夜中に歩き回ったのかもしれない。
哀愁のある尻を見ていると、
とても愛おしくなる。
なぜかって・・・・・。
それ以降に血を見る事は無くなった。
親指の傷も治り、
検査結果も抜群だった。
尿酸値は5.4と安定し、
肝機能やコレステロールも問題ない。
中性脂肪が199と高めなので、
それを抑え込めばよい。
レックスコンビVikiは失敗に終わったが、
VIVIOは良く出来たクルマだった。
元の居場所に戻ったVikiが、
とても嬉しそうに微笑んだ。